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東京地方裁判所 昭和61年(行ウ)7号 判決 1988年1月27日

東京都渋谷区大山町39番8号

原告

南部達雄

同所

南部宏子

同所

阿部晴美

東京都渋谷区代々木4丁目55番5-305号

南部禎子

原告ら訴訟代理人弁護士

中島晧

関哲夫

二瓶修

高山泰正

湯浅正彦

東京都港区芝5丁目8番1号

被告

芝税務署長 深谷和夫

被告訴訟代理人弁護士

中村勲

被告指定代理人

鈴木正孝

外2名

主文

原告らの各請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告らに対して昭和58年12月27日付けでした各相続税の更正及び過少申告加算税の賦課決定のうち,

(一) 原告南部達雄(以下「原告達雄」という。)につき

(1) 課税価格金131,149,000円

(2) 過少申告加算税金2,100円

(二) 原告南部宏子(以下「原告宏子」という。)につき

(1) 課税価格金130,669,000円

(2) 過少申告加算税金2,100円

(三) 原告南部禎子(以下「原告禎子」という。)につき

(1) 課税価格金131,338,000円

(2) 過少申告加算税金2,100円

(四) 原告阿部晴美(以下「原告晴美」という。)につき

(1) 課税価格金130,586,000円

(2) 過少申告加算税金2,100円

を,それぞれ超える部分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告ら4名は,昭和56年12月25日,南部勇(以下「亡勇」という。)の死亡により,相続人として,それぞれ相続税の課税価格が別紙一の1ないし4の各表の各②欄(以下単に「別紙一の各②欄」のようにいう。)のとおりとなる各財産を取得した(以下「本件相続」という。)。

2  原告らは,それぞれ本件相続に係る相続税の申告を別紙一の各①欄のとおり行い,その後同各②欄のとおり修正申告を行ったところ,被告は,同各③欄のとおり過少申告加算税の賦課決定をした上,さらに,同各④欄のとおりの更正及び過少申告加算税の賦課決定をした(以下同各④欄の処分を「本件処分」という。)。

3  原告らは,本件処分を不服として東京国税局長に対し異議申立てをしたが,棄却され,さらに,国税不服審判所長に対してした審査請求も,昭和60年9月30日棄却された。

4  しかしながら,本件処分は,原告らの取得した財産を過大に評価して行ったものであって,違法である。

5  よつて,原告らは,本件処分のうち,課税価額については,別紙一の各②欄の金額を,過少申告加算税については同各③欄の金額を,それぞれ超える部分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実のうち,原告らの取得した財産の課税価格が別紙一の各②欄のとおりとなるとの点は否認し,その余は認める。

2  同2,3の事実は認める。

3  同4は争う。

三  被告の主張

1  本件課税処分の経緯は,別紙一の1ないし4の各表のとおりである。

2  本件相続に係る各原告の相続税の課税価格の合計額及びその計算明細は,別表一の「被告主張額」欄のとおりであり,原告らの修正申告に係る課税価格の合計額及びその計算明細は,同表の「申告額」欄のとおりである。そして,同表の「取得財産」中の「有価証券」のうちの「南部商会の株式」,及び「相続税に加算される贈与財産」を除く各項目の価額については,原告の申告額と被告の主張額は同額である。

(一) 株式会社南部商会(以下「南部商会」という。)の株式の価額について

原告らは,本件相続により,南部商会の株式合計278,310株(以下「本件株式」という。)を,原告達雄,同宏子,同晴美が各69,500株,同禎子が69,810株宛取得したが,これらの相続財産としての評価は,次のとおりとなる。

(1) まず,本件株式は「相続税財産評価に関する基本通達(昭和58年4月8日付け直評5による改正前のもの。以下「評価通達」という。)」168(3)にいう「取引相場のない株式」に該当し,南部商会は石油製品販売卸を営む株式会社で,本件相続開始直前期末以前1年間の取引金額が8,400,000,000余円であるから,評価通達178(1)にいう「大会社」に該当する。このため,本件株式は原則的には評価通達179(1)に定める類似業種比準価額によって評価すべきところ,原告らは同180ただし書により純資産価額方式(課税時期における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する方式)による評価方法を選択したので,本件更正においても本件株式は同方式によって評価することとなる。

(2) そして,評価通達188(6)は,課税時期における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を別紙二の算式1により計算することとしている。

右算式中,「総資産額(相続税評価額によって計算した金額)」は,課税時期における会社の各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額の合計額であるところ,総資産価額を構成すべき会社の各資産は,たとえ会社の帳簿に資産として計上されていないものであっても,相続税法上の課税財産に該当するもの,例えば,無償で取得した借地権,特許権又は営業権等がある場合には,これらも評価通達の定めるところにより評価して総資産価額に加算すべきものとされている。

(3) ところで,営業権とは,一般に,ある企業が,同種事業を営む他の企業が稼得している通常の平均収益よりも大きな収益,つまり,超過収益を稼得できる無形の財産的価値を有している事実関係と解され,資産の評価においては,「企業が持つ好評・愛顧,信認,顧客関係その他の諸要因によって期待される将来の超過収益力を資本化した価値」と位置づけられるところ,評価通達においてはその超過利益金額が少額である場合など(評価通達167)のほかは,同通達165及び166に定めるところにより,営業権の価額を基本的にはその企業に対する課税時期における投下資本金額が稼得する正常利回りを超える収益(超過収益力)を基に複利年金換算で還元する方法により評価することとしており,具体的には,別紙二の算式2によりその評価額を算出することとしている。

すなわち,評価通達に定める営業権の評価方法は,評価企業について,過去3年間の平均利益金額を基に50%の危険率を見込んで将来の年間利益(「平均利益金額」×0.5-「企業者報酬の額」)を測定し,これから標準利益(「総資産価額」×0.08)を控除して超過利益金額が存在すれば,これを基に将来にわたる超過利益の額を資本還元して営業権の価額とするのである。

(4) そこで,同通達の定めるところにより南部商会の営業権の価額を算出すると,その価額は別表二記載のとおり347,909,950円となる。

なお,別表二の②ないし⑤及び⑫の各欄の金額は,以下に述べるところによって記載または算出したものであり,その他の各欄は評価通達の定めるところにより計算したものである。

イ 別表二の②ないし⑤の各欄の金額は,南部商会の各事業年度分の確定申告書及び同添付書類に記載されている金額である。

ロ 別表二の⑫の「総資産価額(相続税評価額)」は,その付表中「更正に係る資産価額」の合計額であるが,そのうち

(イ) 受取手形については,後記5で主張する理由から,本件相続税の昭和58年10月6日付け修正申告書に添付された南部商会の株式に係る1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書(以下「株式評価明細書」という。)の「資産の部(相続税評価額)」欄に記載された「受取手形」の金額1,099,056,928円から同明細書の「負債の部(相続税評価額)」欄に記載された「割引手形」の金額900,830,817円を控除した金額198,226,111円とし,

(ロ) 電話加入権については,同明細書の「資産の部(相続税評価額)」欄記載の電話加入権の価額753,889円を812,000円と評価換えし,

(ハ) 有価証券については,同明細書の同欄の有価証券の価額114,127,265円を114,055,647円と評価換えしたものである。

(5) 右(4)の営業権の価額347,909,950円を純資産価額の計算上,総資産の価額に加算して本件株式の価額を計算すると,本件株式の評価額は別表三記載のとおり230,718,990円(1株当たり829円)となる。

なお,別表三の①ないし⑤の各欄の株式数ないし金額は以下に述べるところによったものである(別表三付表参照)。

イ 同表の①の発行済株式数は,「株式評価明細書」記載の株式数である。

ロ ②欄の金額は,前記(4)のロで述べた南部商会の「総資産価額(相続税評価額)」の金額2,059,932,068円に右営業権の価額を加算した金額である。

ハ ③欄の金額は,後記5で主張するとおり,「株式評価明細書」の「資産の部」「帳簿価額」欄の合計金額2,917,054,107円から「負債の部」「帳簿価額」欄記載の「割引手形」の金額900,830,810円を控除した金額である。

ニ ④及び⑤欄の金額は,ハと同様に,「株式評価明細書」の「負債の部」「相続税評価額」欄及び「帳簿価額」欄の合計金額各2,669,024,230円からそれぞれ同欄中記載の「割引手形」の金額900,830,817円を控除した金額である。

(二) 相続財産に加算される贈与財産価額

原告らは,亡勇の生前において,亡勇から南部商会の株式を次のとおり贈与により取得した(以下右贈与により取得した南部商会の株式を「本件贈与株式」という。)。

氏名

贈与

合計

54.2.20

55.12.15

56.5.1

原告 南部達雄

250株

700株

700株

1650株

同 南部禎子

250

700

700

1650

同 南部宏子

250

700

700

1650

同 阿部晴美

250

700

700

1650

合計

1000

2800

2800

6600

しかしながら,相続財産に加算されるべき贈与財産としての本件贈与株式の評価額の算定上も,右(一)と同様に,後記5で主張するとおり,営業権の価額の評価に際して算定する総資産価額(相続税評価額)は,「資産の部」計上の「受取手形」の金額から「負債の部」計上の「割引手形」の金額を控除した金額によるべきであり,また,1株当たりの純資産価額の算定の基となる負債額(相続税評価額)は,「割引手形」の金額を控除したところによって,次のとおり算定すべきである。

(1) 本件贈与株式の各贈与時点における南部商会の営業権の価額は別表四及び別表五のとおり,昭和55年12月15日現在では279,802,188円となり,昭和56年5月1日現在では281,360,170円となるから,右各時点における本件贈与株式の評価のための純資産価額の算出計算においては,右営業権の価額は総資産の価額に加算されるべきである。

(なお,本件更正においては,昭和54年贈与分については,南部商会の直前二事業年度分法人税申告書等関係書類の保存期間が経過し,営業権の価額の評価が不可能であったため,加算されていない。)

(2) そこで,右(1)により本件贈与株式の評価額を算出すると(評価通達及び旧評価通達の180ただし書に基づき,本件贈与株式の価額を純資産価額に相当する金額により評価する。),本件贈与株式の価額の各相続人の合計額は,別表六ないし八記載のとおり,昭和54年贈与分は867,000円(1株当たり867円)昭和55年贈与分は2,455,600円(1株当たり877円),昭和56年贈与分は2,433,200円(1株当たり869円)となる。

なお,本件更正においては,昭和54年贈与分及び昭和55年贈与分の本件贈与株式の価額は,評価通達188の(6)の(注)2に定める清算所得に対する法人税等の税額に相当する金額の計算上,「法人税等の税率の合計に相当する割合」を56%としてその評価額を算出している。

しかしながら,本訴における被告主張額は,昭和56年9月29日付け直評18による改正前の評価通達(以下「旧評価通達」という。)により,右割合を53%としてその評価額を算出したものである。

すなわち,昭和56年9月29日付け直評18による評価通達の改正の内容は,法人税の一部を改正する法律(昭和56年法律第12号)並びに地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律(昭和56年法律第15号)の施行により,清算所得に対する法人税等の税率が改正されたことに伴い,旧評価通達の右割合53%を56%に改正したものであり,その適用は,昭和56年4月1日以降相続又は贈与によって取得した財産の評価に限られるべきものであるからである。

したがって,相続財産に加算される贈与財産価額は,各相続人が昭和54年ないし昭和56年の間に亡勇から贈与により取得した本件贈与株式の価額の合計額5,755,800円となる。

3  以上により,原告らが本来納付すべき相続税額を算出すると,別表九記載のとおり各原告とも63,732,400円であるところ,原告らが本件各更正によって納付すべきであるとされた税額は各63,723,400円であって,この金額は,いずれもその範囲内であるから,本件各更正は適正である。

4  被告は,本件各更正により,原告らが納付すべきこととなった税額(更正による増加額であり,原告達雄につき11,908,600円,同禎子につき11,701,400円,同宏子につき11,908,600円,同晴美につき12,115,900円である。)の全額を国税通則法(昭和59年法律第5号による改正前のもの,以下同じ。)65条1項の規定に基づく過少申告加算税の計算の基礎となる税額(ただし,同法118条3項の規定により1,000円未満の端数を切捨て)とし,これに100分の5の割合を乗じて過少申告加算税の額(達雄について595,400円,禎子について585,000円,宏子について595,400円及び晴美について605,700円)を算出し,これをそれぞれ賦課決定したものであり,原告らが,右税額の基礎となった課税価格を過少に申告したことについて同法65条2項に規定する正当な理由があったとは認められないから,本件過少申告加算税賦課決定は適法である。

5  超過利益金額算定上の総資産価額について

前述のとおり,評価通達は,その企業の経常的利益金額を基準としてその金額が総資産価額の正常利回り額を超過したものを超過利益金額とし,将来にわたる超過利益金額の合計額を資本還元して営業権の価額を評価するものであり,営業権の評価に関する右算式は,総体として課税時期という一定時点における超過収益力を測定するという目的の下に構成され,そこでは総資産の価額は課税時期において現に企業に投下されている資本の金額を意味するものとして右算式中に位置づけられているのであって,以下に述べるとおり,割引手形が課税時期において企業に現実に投下されている資本を構成するものでない以上,これを総資産に含めるべきではない。

(一) 手形割引は,第三者振出しの約束手形又は為替手形の所持人がその手形の満期日の到来前においてこれを資金化するため,銀行などの金融機関に手形を裏書譲渡して,手形金額から譲渡の日以降満期日までの金利相当額及び手数料を差し引いた金額を受領する取引であり,その法律的性質は手形債権の売買と解される。したがって,手形割引により,当該手形上の権利は,手形割引をした銀行等の金融機関に移転し,旧所持人に残存するものでないことは明らかである。

(二) また,評価通達166・(4)では,総資産価額につき,「通達に定めるところにより評価した課税時期における企業の総資産の価額とする」旨定めているので,総資産価額に算入されるべき受取手形の金額も,同通達に定めるところによって評価すべきこととなる。

ところで,同通達206((受取手形等の評価))は,その(1)において,「支払期限の到来している受取手形等又は課税時期から6カ月を経過する日までの間に支払期限の到来する受取手形等は,その券面金額によって評価することとする」旨定めた上,その(2)において「(1)以外の受取手形等については,これを課税時期において銀行等の金融機関において割引を行った場合に回収し得ると認められる金額によって評価する」旨を明定しているのみであって,既に割引かれてしまった受取手形については何らの定めをしていない。これは,既に割引かれた手形は,銀行等にその所有権が移転し,反面当該企業には割引によって発生した現金等が計上されていることに伴う当然の帰結である。

四  被告の主張に対する原告の認否

1  被告の主張1は認める。

2  同2のうち,南部商会の株式の価額及び相続税に加算される贈与財産の価額(すなわち,本件株式及び本件贈与株式の評価に関する部分)を争い,その余は認める。ただし,原告らが被告の主張するとおり本件株式及び本件贈与株式を取得したことは認める。

本件のような場合に,営業権を評価すべきでないこと,また,仮に営業権を評価するとしても,南部商会の割引手形の金額を同会社の総資産価額の中に含めて計算すべきこと(その結果,超過利益金額はマイナスとなり,営業権の価額は零となる。)は,後記原告らの反論で主張するとおりである。

3  同3,4は争う。

4  同5は争う。後記のとおり,割引手形の金額は総資産価額に含めるべきである。

五  原告らの反論

1  営業権の相続税上の評価について,これを最近の変動激しい経済情勢の下で,不安定な「超過利潤」から算定するのは適切ではない上,取り扱う商品の質に鑑みても,南部商会のような石油製品販売という生産財販売企業においては,営業権を問題とする余地はない。また,南部商会において比較的高利潤をもたらす要因は,すべて貸借対照表に計上されており,その結果として株式の価格計算にすべて折り込みずみであって,その上に更に営業権を評価して課税することは,資産価値の二重計上となり,課税の公平性を害する違法なものである。さらに,営業権を有償取得する場合と異なり,取引価格が形成されない本件のような事例において,営業権を税法上認定することは違法である。

2  銀行等の金融機関(以下「銀行等」という。)において割引された受取手形は,一旦企業からその銀行等へ売買されるとみられている。いわゆる「売切り」にしているのではなく,銀行取引約定書6条1項によれば,「買戻し」すなわち再売買が明確に約定されている。したがって,右条項に規定する一定の事由の発生とともに,割引された手形につき買戻し義務が発生し,その義務の履行と同時に当該企業の資産として復帰すべき運命の下にあるものである。このような割引手形を当該企業の資産から一切除外して営業権の価額を算定することは誤りである。

3  また,企業が手形をもって銀行等から資金の調達をする方法として,手形割引と商業手形担保借入(以下「商担手借」という。)があるが,両者は法的,経済的には同様の性質を持つものである。すなわち,割引手形も商担手借における担保となる手形(譲渡担保手形)もその企業から流出し,所有権が銀行等に譲渡されるという点,当該手形が不渡りになったときに「買戻し」義務が生じる点,及び,両者とも名称は異なるが利息を支払う点においては何らの差異がないものである(むしろ,商担手借の場合は,いわゆる「掛け目」が考慮されて割引手形の場合よりも多めに手形が企業から流出し,銀行等に差し入れらるのが通例である。)。しかるに,あえて両者を区別して,商担手借の場合は手形そのものが資産として企業にとどまるが,割引手形の場合は手形が銀行等に帰属するとするのは,誤りであり,租税の公平性を害する違法な手続きである。

被告は,商担手借における手形の譲渡担保を他の不動産又は動産の譲渡担保と同一視するが,両者は根本的に異なり,不動産等の譲渡担保は被担保債務が弁済されれば返還されるが,担保に差し入れられた手形は返還されることはない(この点も割引手形と同じである。)。また,手形の譲渡担保はその占有が移転する上,権利者は会社更正手続きにおいても単なる更生担保権者の地位にとどまるのではなく,あくまで当該手形の権利者として自ら取り立て,回収することが可能であり,その反面その債権は更生債権として届け出られるのである。また,国税徴収法24条は譲渡担保物件につきいわゆる第2次物的責任を定めているが,同法附則5条4項はいわゆる譲渡担保手形について第2次物的責任を否定しているのである。これらのことは,すなわち,商担手借の譲渡担保が他の動産等の譲渡担保とは異なり,その本質は手形割引であることを示しているのである。したがって,商担手借の場合の受取手形の金額を総資産価額に含める以上,割引手形の場合もその金額を総資産価額に含めるべきである。

4  評価通達166の(2)のロは,手形割引料を支払利子とともに平均利益金額の算出に当たって計算上なかったものとして扱う(すなわち,その分が加算される。)こととしているが,被告は,その趣旨を二重控除とならないようにするためであると主張する。しかしながら,支払利子の場合は,これに対応する他人資本である借入金が総資産価額の中に含まれ,その他人資本を含めた総資産価額の8%が超過利益金額の算出において控訴されるから,借入金の利子相当額がその過程で控除されることになり,二重控除防止の趣旨が妥当するが,手形割引料の場合は,割引手形の額が総資産価額に算入されない限り,二重控除とならないばかりでなく,手形割引料に相当する額は超過利益金額の算出において全く控除されないことになり,不合理な結果となる。そして,このことは土地等の賃料の二重控除の防止を規定していると解される評価通達166の(2)ハ及び同通達(4)との対比からも明らかである。したがって,支払利子について借入金を総資産価額に含める以上,割引手形についても,その額を総資産価額の中に含めるべきである。

なお,被告は,右評価通達の趣旨を,企業本来の営業活動によるものでない営業外損益を除外するためでもあると主張するが,営業外費用については,支払利子,手形割引料の外,売上割引,有価証券売却損その他多種のものが存在するのに,そのうち支払利子と手形割引料のみをなかったものとする根拠に乏しいし,また,容易に算出でき,しかも多額に上る営業外収益を除外していないのは一貫性を欠くことからして,被告の主張は理由となり得ないものである。

5  損益計算書に表現される各勘定科目(以下「損益科目」という。)の損益計算上の処理と,これらの損益の基礎となる貸借対照表に表現される各勘定科目(以下「残高科目」という。)の資産,負債の処理とは整合性をもたなければならないが,損益計算の上では支払利子と手形割引料とは全く同一の取扱いを受けており,また,評価通達166の(2)のロ前段その他いわゆる営業外費用の処理に関する規定においても同様であり,被告も同一の取扱いをしている。そうであるなら,これらの損益科目の発生基礎ないし計算基礎というべき商担手借と商手割引の二つの残高科目も同一の取扱いとし,割引手形残高を総資産の中に含めて営業権の計算を行うべきである。

6  評価通達165においては,通常の企業の収益額を総資産価額に0.08を乗じたものとしているが,これはいいかえると通常の企業の収益額を総資産価額で除したものが0.08ということになる。一方経営分析における総資本利益率は,年間純利益を総資本で除したものとされており,右両者の算式の比較から,0.08は総資本利益を示すものということができる。そうすると,総資本利益率の算出における分母に当たる総資本には,他人資本である負債と自己資本の合計額が当てられるが,受取手形の割引や裏書譲渡がある場合には,その額を総資本の中に含めるのが経営学の常識である。相続税の営業権評価における通常企業の収益額の割合と,経営分析における総資本利益率とは同じ概念であるから,相続税の営業権評価においても手形割引額を総資産価額の中に含めるべきである。

7  企業経営においては,手持ち手形を資金化するについて,営業権のことを考えて商担手借と手形割引とを区別しているわけではない。しかるに,株主につき相続が発生した時点で商担手借か手形割引かによって,営業権の評価,ひいては相続した株式の評価に巨額の差異が発生することは社会常識に反するし,課税の公平性を損なうものである。

六  被告の再反論

1  相続税法は,その12条で非課税の財産とされているものを除き,経済的価値を有する有形無形の財産のすべてを課税対象としており,営業権もこれに含まれるものである。ところで,法人税については,内国法人の所得金額の計算における益金及び損金の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されることとなっており(法人税法22条4項),そこでは,貸借対照表上有償取得された営業権のみが無形固定資産として資産計上されることになっているから,かかる営業権のみに対して課税されることになるが,相続税法にあっては,経済的価値を有するものがその対象になるのであるから,企業が会計処理上営業権を計上していない場合においても,営業権の存在が肯定される場合にはこれを評価算定する必要があるのである。

2  割引手形が一定の場合に買い戻されて企業に復帰することがあることは認めるが,そのような場合には,割引手形が当該企業に復帰した時期以後に,受取手形として当該企業の総資産として計上されるべきものであって,単に割引手形が将来買戻しされる場合があることを理由として,既に金融機関によって割引され,その所有権が当該財産から離脱している割引手形につき,これを漫然と受取手形であるとして総資産に含ましめるべきとする主張は誤りである。

3  手形割引と商担手借とは,企業の資金調達の方法として経済的には類似した面があるとしても,次のとおり,その法的性格は全く異なるものである。すなわち,

(一) 商担手借は,商業手形担保差入証とともに受取手形を借入金の担保として金融機関に裏書交付し,各手形金額の合計額に見合う金額について自己名義の手形を振出し交付し,手形貸付けの形式で金融を受ける取引であり,その実質は金銭消費貸借である。そして,この場合受取手形は,借入債務の担保として貸主の金融機関に交付されているのであり,その所有権が金融機関に移転するのではない。したがって,企業は,商担手借を受けた後は,投下資本として,自己の単名手形を差し入れて借り受けた現金又は当座預金と,担保として金融機関に渡っているとはいえその受取手形を保有していることになるのである。

これに対し,手形割引による受取手形の交付は,前述のとおり,法的には手形の売買と解されるのであるから,その所有権は金融機関に移転し,割引により得た現金が企業に存することになるのである。したがって,割引されて企業の下にない手形をなお企業の投下資本を構成すべき資産として計上することが認められる余地はないものである。

なお,貸借対照表において,借方に手形割引により得た現金又は当座預金が記載され,これとは別に受取手形割引高が注記される(財務諸表規則58条の2)のは,不渡りの際の遡及義務の存在を注意させるものであり,また,この注記に代えて,割引手形と受取手形とが両建てで併記される場合も,これは単に受取手形割引高の注記に代えたものにすぎないから,借方に現金又は当座預金が残るだけなのである。

(二) さらに,国税徴収法24条と同法附則5条4項の規定は,商担手借のため担保として提供された商業手形は通常の譲渡担保とは性質を異にし,一部には,実質的にみて手形割引の簡便な形として行われているものもあること,徴収手続きが煩さとなること等を考慮し,実情を検討したうえで最終的な結論を出すこととし,とりあえず当分の間,手形で担保として第三者に譲渡されたものについて物的納税責任の規定を適用しないこととしたものに過ぎない。

(三) 要するに,商担手借の方法で提供した手形の譲渡につき,その一部に実質的には手形割引とみうるものがあるとしても,それとは逆に,手形割引されたものを商担手借とみうる余地はないのである。

4  評価通達166の(2)のロにおいて,支払利子,手形割引料を所得金額の計算上なかったものとした趣旨は,超過利益金額算出の過程で,投下されている総資産の金利をまとめて控除することとしているので,二重控除とならないようにこれらのものがなかったものとしたものに過ぎず,このことのゆえに割引手形の額を総資産価額に含ませなければならないというものではない。

また,右評価通達においては,超過収益力を算定する場合の基礎となる収益の額は,企業本来の営業活動によって稼得される収益であるべきであるので,企業本来の営業活動そのものに伴うものではない特別損益と営業外損益を計上することは適当でないのである。したがって,平均利益金額の算出の基礎となる所得金額の計算の際には,営業外費用である支払利子及び手形割引料をなかったものとして取り扱っているのである。なお,この評価通達で,営業外損益のうち,営業外費用である支払利子,手形割引料のみを掲げている趣旨は,営業権の評価上,企業の営業外損益のうち重要性の高い支払利子,手形割引料のみを参酌すれば営業利益算出の目的が一応足りるとしたもので,かつ,企業会計においては,営業外費用が「販売費及び一般管理費」に混入されている会計処理も多いことから,計算上の簡便性をも考慮したものである。

第三証拠

証拠関係は,本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから,これを引用する。

理由

一  当事者間に争いのない事実

請求原因1の事実のうち,原告らの取得した相続財産の課税価格を除いた部分,同2(本件処分の存在)及び同3(不服申立て),並びに被告の主張1(本件処分の経緯),同2のうち,南部商会の株式の価額及び相続税に加算される贈与財産の価額を除いた部分並びに原告らが本件株式及び本件贈与株式を取得した事実については,当事者間に争いがない。

二  本件処分の違法性の有無について

原告らは,本件処分に相続財産の価額の過大認定の違法がある旨を主張するところ,その主たる争点は,相続税の課税価格の算出における,原告らが取得した本件株式及び本件贈与株式(以下これを合わせて「本件株式等」という。)の評価についてであるので,以下順次検討する。

1  被告は,被告の主張2記載のとおり,本件株式等の評価に当たり,原告らが申告において採用した(評価通達180ただし書)純資産価額方式により,評価通達188の(6)に基づき課税時期における1株当たりの純資産価額を算出しており(本件株式等の右評価方式自体については,原告らは明らかに争わない。),その過程において南部商会の総資産価額のうちに同会社の営業権の価額を含めているのであるが,原告らは,まず,南部商会については営業権の価額を総資産価額に含めて株式の価額を算出すべきではないと主張する。

(一)  しかしながら,株式の評価において純資産価額方式を採用した場合における,その算式中にある総資産価額とは,課税時期における企業の各資産を評価した価額の合計額をいうものと解すべきところ,総資産価額を構成すべき企業の各資産は,貸借対照表上に資産として計上されていると否とにかかわらず,経済的価値を有する有形無形の財産のすべてを含むものというべきである。

ところで,一般に営業権とは,企業が有する長年にわたる伝統と社会的信用,名声,立地条件,営業上の秘訣,特殊の技術,特別の取引関係の存在等を総合した,将来にわたり他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産価値を有する事実関係と解すべきであるから,これは,将来におけるその超過収益力を資本化した価値として,原則として課税時期においてこれを評価し,総資産価額の中に含めるべきものである。

(二)  原告らは,営業権の評価を変動激しい経済情勢の下で不安定な超過利潤から算定するのは適切でないと主張するが,営業権自体が前記のとおり将来にわたり他の企業を上回る収益を稼得できる財産価値としてとらえられ,その評価が必要とされる課税時期において,当該営業権に右の財産価値が認められる以上,その価額を課税時期において算出される超過利益金額を基本として算定することも許されるものというべきであり,また,評価通産による営業権の評価方法は,後記のとおり,課税時期から過去3年間の収益状況を考慮の上,更に50%の危険率を見込んで算定するというものであるから,これをもって不適切,不合理なものであるということができない。

(三)  また,原告らは,高利潤をもたらす要因は貸借対照表に計上ずみであるから,更に営業権を評価することは資産の二重計上になると主張するが,前述のとおり,営業権の価額は,将来の超過収益力を期待したところの財産価値であるところ,企業が自己に潜在する将来の予想収益等を貸借対照表に計上することは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準では認められていないのであるから,営業権価額が貸借対照表に計上されることはあり得ず,したがって,資産の二重計上ということも起こり得ないのである。原告らの主張は,当期における利潤を源泉とする資産価額と,将来の超過収益力の現在価値を求める営業権価額とを混同するものというべきである。

(四)  さらに,原告らは,取引価格が形成されない営業権については,これを評価すべきでないと主張するが,取引価格が形成されない営業権であっても,財産的価値が認められる以上,相続税の課税に当たりこれを評価すべきことは当然であり,相続税の財産評価上合理的な方法によりその価額を算出し得ることも明らかである。また,南部商会のような生産財販売企業においては営業権を評価すべきではないとの原告らの主張は,独自の見解というべきであり,営業権の性格を前述のごとく解する以上,同会社の営業権についても,これが算出される限り,これを認定し,企業の総資産価額の中に含めることができるものというべきである。

結局,営業権の評価に関する原告らの主張は,いずれも採用できない。

2  次に,被告は,営業権の評価に当たり,評価通達165,166により,過去3年間の所得の金額を基礎として平均利益金額を算出し,さらに別紙二の算式2により,これを基に50%の危険率を見込んで将来の年間利益を測定し,これから標準利益(総資産価額×0.08)を控除して,その残額(超過利益金額)を基に将来にわたる超過利益の額を資本還元して,課税時期における営業権の価額を算出しているが,その算式中の総資産価額の中に,既に割引された受取手形は企業の資産を構成しないとしてその額を含めていないところ,原告らはこれを含めるべきであると主張するので検討する。

(一)  まず,営業権の価額は,その企業の将来における超過収益力を評価するものであり,そして,これは,基本的にはその企業の課税時期における投下資本金額が稼得する正常利回りを超える収益力として把握することが相当と考えられる。

そうすると,前記算式中の総資産価額は,課税時期における総資産の価額,すなわち,現に企業に投下されている資本の金額を基準としてこれをとらえるべきである。

ところで,一般に,手形割引は,第三者振出の約束手形又は為替手形の所持人が,その手形の満期日の到来前にこれを資金化するため,銀行等に手形を裏書譲渡して,手形金額から譲渡の日以降満期日までの金利相当額及び手数料を差し引いた金額を受領する取引であり,特別の事情があるときのほかは,これを手形の売買と解すべきであるから,割引された受取手形は当該企業から銀行等に所有権が移転し,もはや企業の資産を構成するものではないというべきである。

(二)  原告らは,銀行取引約定書6条1項に割引手形の買戻し義務が約定されており,割引手形は一定の場合に企業の資産として復帰すべき運命の下にあるから,これを企業の総資産に含めるべきであると主張するが,割引手形が買戻しにより復帰した場合は,その時点で受取手形として企業の総資産に含めるべきことになるのであり,一旦売買により所有権が移転した手形について抽象的に買戻し義務があるからといって,買戻し前にこれを企業の総資産に含めるべきものとする主張が失当であることは明らかである。

(三)  次に,原告らが割引手形の額を総資産価額に含めるべきであると強く主張する根拠は,割引手形と商担手借における譲渡担保手形とを比較して,両者の経済的,あるいは会計処理上の同質性,類似性から,課税手続において商担手借の譲渡担保手形の額を総産価額に含めて処理している以上,割引手形についても同様に取り扱うべきであるというものである。

ところで,一般に,商担手借とは,割引に適さない手形等の所持人がこれを資金化するため,銀行等との間で金銭消費貸借契約を締結したうえ借入金相当額の単名手形を振り出し,他方右割引に適さない手形等を担保として商業手形担保差入証とともに銀行等に交付し,通常はこの担保手形の取立金によって借入金の弁済に充てるという取引であると解される。

そうすると,成立に争いのない甲第1ないし第4号証をも勘案すると,確かに,商担手借の場合に担保として譲渡された手形は,手形以外の他の譲渡担保物と異なり,所持人に復帰することはないのが通常であること,一定の場合に所持人に買戻し義務が発生することがあること,その経済的実質が所持人の資金調達の一手段とされているということ,利息の性格を有する金員が支払われること,などの諸点において,商担手借と手形割引とは同様な性格を有するものということができる。しかしながら,その法的な性格は,右に述べたとおり,一方は手形の売買,他方は金銭消費貸借における譲渡担保手形というように,明らかに異なるものといわざるを得ないのである。したがって,このような割引手形と譲渡担保手形の法的な性格の違いに着目して,課税手続上,両者につき異なる取扱いをすることも許されるものというべきであって,これを目して租税の公平性を害するとする原告らの主張が失当であることは明らかである。

また,仮に,その経済的同質性に着目して,割引手形と譲渡担保手形とを税法上も同一の取扱いをすべきであると解したとしても,前記の総資産価額が現に企業に投下されている資本を基準としてとらえられるべきであることに照らすと,譲渡担保手形について,割引手形と同様に通常企業の外へ流出して復帰することがないという点から,むしろ,逆にその額を手形割引と同視して総資産価額から除くべきかどうかが問題になってくるものと考えられるのであって(国税徴収法24条,同法附則5条4項は,譲渡担保手形について,むしろその割引手形との同質性を一の理由として,当分の間物的納税責任の規定を適用しないこととしているものと解される。),その当否はともかく,譲渡担保手形の類が現行の課税手続において総資産価額に含められているからといって,割引手形についてその額を総資産価額に含めることの相当性を根拠づけることにはないものというべきである。

したがって,原告らの商担手借と手形割引の同質性を根拠とする主張の理由のないことは明らかである。

(四)  なお,評価通達は,166の(2)のロにおいて支払利子,手形割引料を所得金額の計算上なかったものとしているが,これは,超過利益金額算出の過程で控除される標準利益金額(総資産価額×0.08)の中に,投下されている他人資本の金利に相当する分も含まれていることから,二重控除とならないようにする趣旨であると解されるところ,原告らは,支払利子の場合は二重控除の防止の趣旨が妥当するが,手形割引料の場合は,割引手形の額が総資産価額に含まれなければ二重控除の防止とならないばかりでなく,手形割引料に相当する額は非控除になると主張する。

しかしながら,右主張は理由がない。すなわち,支払利子に対応するのは,これを発生させ,貸借対照表上借方に記載される借り入れられた現金又は当座預金なのであり,また,手形割引料に対応するのは,やはりこれを支払った上で取得され,貸借対照表上借方に記載される現金又は当座預金なのであって,それぞれの対応関係において前述の二重控除防止の趣旨が妥当しているのである,したがって,譲渡担保であると否とにかかわらず,受取手形が存在する場合に,これが総資産価額に含まれることと,支払利子,手形割引料を所得金額の計算上なかったものとして扱うこととの間には,何らの関係もないのである。

(五)  原告らは,損益科目と残高科目とを同様に扱うべきであること,あるいは,相続税の営業権評価における通常企業の収益額の割合と,経営分析における総資本利益率とは同一の概念であることなどを理由に,割引手形の額を総資産価額に含めるべきであると主張するが,これらの主張は,いずれも目的,概念の異なるものを同一に論ずるものであって,採用の限りでない。

3  以上のとおり,被告が本件株式等の価額の算定に当たり,南部商会の営業権を評価しその算定の基礎に含めたこと,及びその営業権の評価に当たり,割引手形の額を南部商会の総資産価額に含めなかったことに何らの違法はないというべきである。

三  そうすると,相続財産である本件株式等の価額は,評価通達に示すところに従って評価算定することが相当であると考えられるから,これによると,被告の主張2,付表を含む別表二ないし八(申告額欄と更正額欄とに分かれているものについては更正額欄)各記載のとおり算出するのが相当であると認められ(右計算の基礎となる発行済株式数,別表二の各欄(ただし,計算上又は付表により算出されるものを除く。以上各別表について同じ。),同付表の受取手形を除く各科目,別表三の付表の受取手形,営業権及び割引手形を除く各科目,別表四,五の各欄,同各付表の受取手形を除く各科目,別表六の付表の受取手形を除く各科目,別表七,八の付表の受取手形及び営業権を除く各科目については,原告らは明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。),その結果は別表三,六,七,八の各⑩欄記載のとおりとなる。したがって,本件株式の1株当たりの価格829円(別表三の⑨欄記載の金額)を当事者間に争いがない各原告の取得株式数に乗じて計算すると,各原告の相続財産としての本件株式の評価額は,別表一の被告主張額欄記載のとおりとなり,また,本件贈与株式の贈与年度の1株当たりの価格(別表六ないし八の各⑨欄記載の金額)をやはり当事者間に争いがない各原告の取得株式数に乗じて計算すると,各原告の相続税に加算される贈与財産の評価額は,別表一の被告主張額欄記載のとおりとなる。

そして,各原告のその余の相続財産の評価については当事者間に争いがないから,結局,各原告の取得した相続財産の課税価格は別表九に記載のとおりとなり,これは本件各更正による課税価格を上回るから,本件各更正に過大認定の違法はないものというべきである。

四  また,各過少申告加算税の賦課決定もこれを違法とする事由がない(原告らが課税価格を過少に申告したことについて,昭和59年法律第5号による改正前の国税通則法65条2項に規定する正当な理由があったとは認められない。)から,適法である。

五  よって,原告らの各請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法89条,93条1項を適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宍戸達徳 裁判官 山崎恒 裁判官 中山顕裕)

<以下省略>

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